心身のバランス 2

わたしの患者のなかでもとくにめずらしい患者がいました。


あたまの動きが自分で制御できない、若い女性です。


まるで人形のように、あたまがたえず左右にぐらぐらゆれているのです。


もちろん、多くの医師に診てもらいましたが、だれも助けてくれなかったのです。


・・・残念ながら、わたしも助けることができなかったのです。


しかたなく、運を天にまかせる気持ちで例の記憶をさかのぼる方法をすすめました。


症状にはとくに変化がなかったにもかかわらず、その女性は毎週5、6ページずつ、誠実に書いては焼き捨てていました。


ところがある夜、どうしても書かなくてはという思いがつのってきて、夫に夕食の準備を頼むと、せかされるように2階にかけあがりました。


寝室の机に向かうと、その女性は同じことばを執拗にくり返して書きはじめました。


「できない。できない。わたしにはできない・・・」


いつものように数ページを焼き捨てたあと、キッチンにおりて行きました。


夫は妻のあまりの変わりように呆然としていました。

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