好きな乗り物10

想像を絶する鉄道の世界がここにはある。

見渡す限りの大平原の中を、どこまでもどこまでも伸びる1本の線路。
もしかりに「単調」という言葉を視覚化するとしたら、この景観こそがぴったりなのではあるまいか。

最後の夜を迎える。ディナーを終えて寝室でくつろぐ。
「百聞は一見に若かず」と、そんな言葉を反芻しているうちにいつしか寝入り、翌朝目が覚めたところで3泊4日の長旅を終えた「インディアン・パシフィック」は終着のパース・ターミナルに静々と入線する。

好きな乗り物9

列車はブロークン・ヒルを過ぎて南オーストラリア州に入り、オーストラリア湾の入江の町、州都アデレードへと南下する。

アデレード駅で1時間半ほど停車し18時に発車。3日目の朝を迎える。
「インディアン・パシフィック」は、いよいよ沿線最大の見せ場にさしかかる。
「木がない」という意味のナラボー平原に入って、クックの手前、オールデアから直線区間が延々と続くのである。

その長さは世界一の478km!日本でいうと、東海道本線のキロ程で凍京から滋賀県の守山付近までの距離がなんと一直線になっているという。

好きな乗り物8

列車はトンネルをくぐり、蛇行を繰り返しながら勾配を克服する。

やがて、標高1092m、オーストラリアの鉄道で最も高い地点を通過すると、一転して下り込む。

この山地には、リスゴー付近にスイッチバックを繰り返しながら頂上を目指す、ジグザグ鉄道という蒸気機関車の保存鉄道がある。

一夜明けると、景色が一変しているのに驚かされる。

茫漠とした不毛の大地が果てしなく続き、やや単調ではあるが、時折カンガルーやエミュなどを見かけることもある。

好きな乗り物7

4352kmも走破するとなると、さぞや沿線は変化に富んでいると思われるかしれないが、そこはオーストラリア、一部を除くとほとんどが大平原、行けども行けども景色が変わらないということのほうが多く、趣を求めて行くと期待外れに終わる。

ここはむしろ、単調ながら日本にはない、あたかも地球の素顔を垣間見るような、豪快で雄大なスケールの自然景観に接することに眼目をおきたい。

シドニー中央駅から「インディアン・パシフィック」は出発する。

2時間ほどで沿線で唯一の山岳区間、ブルーマウンテンにさしかかる。

好きな乗り物6

設備はひととおり揃っているが、トイレとシャワーは車端の共用設備を利用する。

コーチは1列2+2人掛けの4席で、回転可能なリクライニング座席が配されている。

ファースト・クラスの場合は、食事代金はすべて料金に含まれており、ワインやビールなどドリンク類のみ別料金。
ホリデーとコーチの客はビュッフェカーで食事をとるか、ここで買い求めて自分の席で食べることになる。

ファースト・クラスのラウンジカーにはピアノも備えてあり、気隆な社交場といった雰囲気だ。
もちろん、ドリンクやソフトドリンク、スナックなども豊富に揃えてある。

なお、運行25周年を機に現在、車両のリニューアルが進められている。

好きな乗り物5

ルーメットは、ベッドにもなるラウンジチェアを中心に、洗面台、トイレ、洋服ダンス、化粧鏡、折り畳み式テーブル、読書灯などの設備を備え、タオル類、アメニティ・グッズ、コップなどが揃えてある。

シャワーは車端にある共用シャワーを利用する。

ツイネットもほぼ同様だが、ベッドが2段式、そしてシャワーがついているところが異なる。

印象的なのは羊毛の枕、布団などの寝具類で、清潔で軟らかく、心地好く眠りにつける。

ホリデー・クラスはすべてツイネットで、1人客の場合は相部屋になることもある。

好きな乗り物4

「インディアン・パシフィック」は、すべてステンレス製の車両で編成されている。
車体には、大鷲と太陽をあしらった鮮やかなロゴマークがつけられている。

客車には、「ファースト・クラス」「ホリデー・クラス」と呼ばれる寝台車、「コーチ・クラス」と呼ばれる座席車、ファースト客専用の食堂車とラウンジカー、ホリデー客専用のビュッフェもあるラウンジカー、コーチ・クラス用のビュッフェカー、荷物車、車運車などがある。

ファースト・クラスには1人用個室の「ルーメット」と2人用個室の「ツイネット」がある。

好きな乗り物3

西オーストラリア州は、すでに1901年に、横断鉄道が完成した暁には連邦に加わることに同意していたのである。

こうして1970年、それまで洲によって軌間がまちまちだったものを、西オーストラリア州が1067mmの狭軌を1435mmの標準軌に改軌し、西・南オーストラリア州にまたがる区間に標準軌による新線が完成したのを受けて、「インディアン・パシフィック」は誕生した。

ただし、この時点では始発はパースではなくカルグーリでまたニュー・サウス・ウェールズ州にも乗り入れてはいなかった。

好きな乗り物2

この列車が人気のもう一つの大きな理由は、この列車がヨーロッパの「オリエント急行」、南アフリカの「ブルー・トレイン」と並び称されるほどの豪華列車だからである。

ところで、この列車が誕生した経緯がちょっと面白い。
というのは、もともと鉄道関係者の発想から生まれたのではなく、政治的背景が裏にあったのである。

即ち連邦結成の機運が高まった時、西オーストラリア州の参加をうながすために、南オーストラリア州、ニュー・サウス・ウェールズ州を直通する長距離列車を運行させる必要があったのだ。

好きな乗り物

「インディアン・パシフィック」という列車名は、この列車がオーストラリア大陸をはるばると横断してインド洋側と太平洋側を結ぶことに因んでいる。

オーストラリア最大の都市、世界三大美港の一つとも賛美されるシドニーと、西オーストラリア州の州都でかつてゴールドラッシュで賑わった町パース間の4352kmを、3泊4日の行程で走破する列車である。

この2都間には、2時間の時差がある。

この列車の人気は高く、予約を申し込んでもなかなかとれないというのが実情だが、それはなにも大陸を横断する超ロングランの夜行列車だからというだけではない。